2014年11月11日火曜日

徳大寺有恒さんが亡くなった。

嗚呼…。徳大寺さんの本を読み始めたのは小学生1年の時だったか。なんだか難しいこと書いてあるなぁと思いつつ面白くて毎年間違いだらけを買っていました。それから20年以上たってとあるアルファ特別仕様の発表会でお見かけし、恐る恐るお声をかけさせていただきました。
「初めまして、森と申します。徳大寺さんのおかげで、いや、徳大寺さんのせいで、人からアホと言われるほどのクルマ好きになってしまいました。握手させてください」
「そうですか…ではもっともっとクルマ好きになって下さいね」

Instagramより
そのあと、不思議な縁があるものでソーシャルメディアで知り合った友人がかつて徳大寺さんとお仕事してたということで、ご自宅にお伺いすることがありました。
渋滞してて遅れるとベランダに立っててずっと待っててくれたようです。ヘミングウェイの小説に「大人の男同士が友人になるにはシガーがあればいい」とありました。徳大寺さんのシガー好きはつとに有名でしたからとっておきの一本を持って行きました。書斎にて煙にしてしまおうという算段。お渡しするとにっこり微笑んで「こういう良いものはもっと時間のあるときにゆっくりやりましょう」とお受け取りになりませんでした。一流の配慮であり美学だったのでしょう。『あの映画で出てきたあの年式のフォードはナ、オプションでオフホワイトとスカイブルーのツートンがあってそりゃオシャレなもんだった」など、凄まじい記憶力と知識教養の深淵に驚いたものです。
さらにそのあとお台場で行われたコンコースデレガンスでなぜかご一緒することに。麻のハットにブレザーで、コーディネート完璧。こんなおしゃれな方がいるのかと、まるでペブルビーチにいるかのような気分でした。一見地味なフォードモデルBの2ドアセダンをじっと見て「森くん、ボクはこれが一番素敵だと思うナ」とじっと見られてました。そこに目を止められなかった自分の見る目のなさを嘆いたものです。
ちょうど去年くらいから手放してしまってた著作を古本屋で買い戻して再読していたところです。30年、20年前の著作に書かれていることはもはや『よげんのしょ』です。たぶん当時、そんなことが“見えていた”のは徳大寺さんだけだったでしょう。当時読んでも「ふーん」くらいにしか思いませんでしたから。
そして、バブルだ、ブランドだと、浮かれる時代にスタイルや様式、テイストといったことを書かれていたことを含めて、あまりに飛び抜けた仙人かちょげのような方だったんだなぁ、と。
知る限りにおいて、ジャガーというブランドについて書かれた
日本語の文章で、この本の第一章にあるものより
素晴らしいものを私は知らない。

クルマに単なる工業製品やスペックや移動手段でない、移動の自由や権利や楽しさや文化など様々な側面と深さがあることを教えてくれたのが徳大寺さんでした。そして、クルマからワタシはスタイルや様式や文化や、歴史や、階級やダンディズムや、デザインやら産業やら経済やらを学びました。多分それが今の自分を形作っていますし直接的間接的にそれが仕事にもなってます。そのきっかけは間違いなく徳大寺さんです。
亡くなった方を偶像化する趣味はありませんが、これで本当に「クルマの神様」になられてしまったのだなぁ…と思います。
「次来た時はゆっくりシガーをやりましょう」は果たせませんでした。残念です。
ありがとうございました。あちらでヘンリー・フォードさんやウィリアムズ・ライオンさんや小林章太郎さんとクルマ談義してて下さい。ご冥福をお祈りいたします。

※2014年11月8日のFacebookポストより再掲

2014年3月3日月曜日

AppleのCarPlay発表の理由とその背景。

Appleが日本時間2014年3月3日、CarPlayを発表いたしました。このタイミングについて解説しましょう。


実は、明日からジュネーブモーターショーが始まるのです。このジュネーブショーの開催地はいわずもがなスイス。ジュネーブショーは世界の主要モーターショーの一つに数えられるのですが、同時に唯一自動車メーカーが存在しない開催地でもあります(リンスピードなどのベンチャー系はありますが)。

本来、各国のモーターショーはその国の自動車メーカーが主役になります。なぜなら、いまも昔も、自動車産業は工業国であれば、もっとも大きい産業だからです。


デトロイトショーはビッグスリーオンステージですし、フランクフルトはドイツメーカーがオラオラで覇権を競い合います。もちろん東京モーターショーは、日本車です。主力モデルのモデルチェンジや力の入ったニューモデル、コンセプトカーは自国開催のショーか、もしくは主要マーケットでの発表となります(ワールドプレミア)。主要マーケットという意味では、20年くらい前は東京がそれに相当し、今は上海。ドイツメーカーもアメリカメーカーも中国専用車や高級車、量販となるクルマをここで発表するようになりました。アメリカ(ロサンゼルス)は今も昔も世界一の自動車マーケットなのでいわずもがな。


そう考えるとジュネーブはクルマメーカーがない=スイスらしく永世中立なワケです。ゆえにある種カオティックでアラブの王様や自分の銀行口座なんて見たことすらもないヨーロッパのお金持ち相手の手作りウルトラスーパーカーや一発当てたい(ないしは出資してもらいたい)ベンチャークルマメーカーや、そうした人たちが趣味で作っちゃったようなメーカーが出てきて、それはそれで面白いのです。例えばスイスのクルマメーカーで今ならリンスピード、60年代〜70年代ならモンテベルディとか。あとはベネルクス三国とか北欧(ケーニグセグとか)、東欧のスーパーカーメーカーとか。まぁ、そもそもスイスって国自体がそういう方達とのおつきあいを国全体のナリワイとしているワケですしね。

つまり既存メーカーの御威光が届かない(しいていうならドイツメーカーでしょうか)モーターショーであり、なんでもありの素養がある珍しい主要ショーなのです。そんなジュネーブショーの前日にAppleがCarPlayを発表したというのは、流石Apple、絶妙としかいいようがありません。いくつかのクルマメーカーはここにCarPlay搭載のコンセプトカーもしくは発売予定車を発表するでしょう。Appleはいきなりジュネーブの主役の一つになったワケです(ちなみにVWグループはGoogleを現状は利用)。Appleが今日このタイミングで発表したのはこうした背景があると思われます。IT系のニュースサイトだけではわからない裏話ですが、こうしたコンテキストを押さえるとさらにクルマとインフォテインメントは面白くみれると思います。

こちらもどうぞ。http://torumori.blogspot.jp/2012/09/ipad-mini.html






2013年2月17日日曜日

偶然の一致

2月16日の今朝、数日前に注文していた沢村慎太朗さんの「午前零時の自動車評論3」が届きました。



クルマ雑誌や本で名前を探して読む書き手の方が何人かいらっしゃって、沢村慎太朗さんはそんな方の一人。そしてリアルに存じている方でもあります。つまりはワタシが自信を持ってオススメする(ハードコアクルマ好き向け)の書き手の方です。「スーパーカー誕生」という三国志もかくやなスーパーカーの歴史絵巻825ページ也、を著したくらいですから。

内容としては彼が有料メルマガ(これは購読していない)で書いている原稿を加筆修正して一冊にまとめたもので、これまでも1冊目、2冊目と買っているもの。「午前零時の自動車評論4」も同時に注文したのですが、なぜかこちらだけ先に届いた、と。

読み進めていくうちになじみのある名前が出てきて驚きました。「楽園」とタイトルを打たれた原稿の楽園とは代官山にある喫茶店「カフェ・フォリオ」だったのです。この本で知ったのですが沢村慎太朗さんはこちらでバイトしていたんですねぇ。

「カフェ・フォリオ」は代官山某所にある喫茶店で、昼も夜も古き良き代官山住民やなんだかカッコいい大人がたくさん集まっている素敵なお店でした。オールドビーンズのコーヒーも美味かった。そしてオーナーがクルマ好きだったせいか、クルマ好きが多かった(なんでそこがクルマ好きの「楽園」だったかは沢村さんに敬意を表して書きませんが)。

なんでこの店を知っていたかというと、ワタシもたまにお邪魔していたからです。静岡生まれの田舎モンのワタシがなんでこんな店に出入りできたかというと、ご常連につれて行ってもらったからに外なりません。

そのご常連をHさんとします。雑誌や広告やテレビ番組の企画・ディレクターをやっていたHさんと知りあったのは、大学を出てとある出版社でバイトをしていた(ってもう17〜18年前や…)時、外部スタッフとしていた彼と一緒に仕事をしたからでした。彼はどういうわけかガキンチョだったワタシを気に入って、その編集部にいた2年間はもちろん、そこを辞めてフリーランスになってからも、ちょくちょく声をかけてくれました。


彼には本当にたくさんのことを教えてもらいました。
仕事の仕方。
企画の考え方。
企画書の書き方。
キャッチコピー・原稿の書き方。
写真撮り方。
写真のディレクションのしかた。
見ておくべき写真集。
仕事のダンドリの付け方。
仕事のチームのまとめ方。
モノゴトの見かた、考え方。
カッコいいプレゼントの渡しかた。
気の利いた電話のしかた。
美味い食べ物屋。
話し方。
立ち振る舞い。
離婚のしかたと慰謝料の払い方(いや、まだ結婚もしてないんスけど)。
メシの食い方。
ありとあらゆる遊び方(というより人生の楽しみ方)
たくさんの尊敬できる年上の方の紹介。
そして、もちろんクルマ。

今のワタシの仕事のしかたとパーソナリティの8割は彼おかげと申しましょうか影響下にある、と言い切れます。

そんな彼との待ち合わせ場所は決まって「カフェ・フォリオ」でした。

たいてい打ち合せという名目で集まったのですが、まぁ打ち合せなんざ「かくかくしかじかで、こうなっている?どう思う?だよな、んじゃあとはヨロシク」なんて具合で10分15分やそこら。そこからは73カレラのクラッチミートがどうだの、やっぱりW123のメルセデスのドアは金庫そのものだの、ロレックスのサブマリーナーは肉体労働者の時計だから使い倒して正解だの、ハッセルブラッドのプラナーC100の解像感は空前絶後だの、そんな雑談が8割を占めていたのでありますが。


そして、この「楽園」にHさんが出てくるのです。沢村慎太朗さんを紹介してくれたのもHさんなので、不思議ではないといえば不思議ではないですが、流石に驚きました。

「楽園」の原稿の中の誰がHさんなのかは、たぶんHさん本人を直接知らないと分からないと思います。いや、分からなくてもいいんだ。こういうものは。

さて、いつもはアマゾンから本が届くと(それもクルマの本となればなおさら)その場で封を切って読み始めるのですが、今日はそうしませんでした。というのも墓参りに行ってきたからです。墓前には線香代わりに彼の大好きだったTrinidadのシガーを供えました。同じ煙なら線香臭いよりこの方が喜ぶはず。

今年は写真撮るの忘れた。これは去年の。

「線香代としちゃ、高けぇなぁ」と思わないような立派な大人になりたいと、毎年墓前で誓うのですが、今年もまたそう思っちゃった。進歩ないなぁ、自分。

そうして帰ってきて、おもむろに読み始め出会ったのが「楽園」原稿だったのです。まさか、今日、Hさんの話と思いでの「カフェ・フォリオ」の話を読めるとは思わなかった。Hさん、そして沢村慎太朗さんありがとうございます。Hさんの命日の今日、望外の偶然でした。



2012年9月25日火曜日

テスラの例。EV (電気自動車)対応がブランディングになる時代。

アメリカのEVメーカーTesla Motors テスラ モーターズが今日、独自の急速充電インフラを発表しました。


Supercharger(このネーミングはなかなか上手い)と名付けられたこれは、30分で90kWの電力を急速充電するというもの。




Teslaの勝負パンツことTesla モデルSの場合はカタログスペックで150マイル(約240km)の航続距離に相当するので少なくとも160km〜200kmくらいは実際に走れるでしょう。




Superchargerはシステムの名前でありインフラの名前であるようです。極秘裏に今日の発表までにカリフォルニア6カ所に作られ、今日から即日Tesla モデルSのオーナーは使えるようです。「Today!」(カリフォルニア訛りでお願いします)ってまるでスティーブ・ジョブスのAppleの発表。 

2013年前半までにアメリカのほぼ全土に配置し、2013年後半にはヨーロッパとアジアに設置を開始する、とのこと。パリには一等地にゴージャスな直営店がありますし、東京の青山にもあります。おそらく日本でモデルSが販売されるころには都内数ヶ所に設置されるのかもしれません。



ちなみにこのSupercharger、その電力はTeslaのCoFounderであるイーロン・マスクが創業したソーラー関連企業、SolarCityによって保守、電力を供給することで設置後のコストを最小限に抑える……というところも上手いです(日本ではどうなるんでしょうか)。 

いくらTesla モデルSがEVとしては長大な航続距離を誇るといってもそこはカタログスペックですから、実際はマージンも見込んで6〜7割といったところ。そこで、ダイナーやレストラン、ショッピングモールなどにこれを設置し、食事や買い物をしている間に充電を完了させることで実用上の航続距離の問題をクリアしようというものです。

 EVの問題点はやはりインフラなわけで、100年にわたって構築してきた内燃機関のスタンドに勝負しなければなりません。そこをEVメーカーが(今のところ)自前でやらなければならないところに辛さがあると同時にそれをやってしまうところにTesla Motorsの凄さがあるともいえます。 


さて、このSupercharger、カリフォルニア郊外にある高級レストランやナパバレーあたりのワイナリーがこぞって導入を進めたがるような気がします。


たとえば同じようなエリアに同じような価格帯、味のレベルのイタリアンレストランがあったとすれば、Tesla モデルSのオーナーはSuperchargerが設置されている方を選ぶでしょう。逆にレストランの方はスジの良い客を引っ張ることができるわけです。

Tesla モデルSの価格は$50,000〜97,900。日本円にするとおよそ380〜760万円と驚異的にお安い値段に感じられますが、円高のトリックでして、現地の価格でいうとメルセデス・ベンツEクラス、BMW5シリーズ、Audi A6の上級モデルで$60,000くらいですから、日本で言えば800〜1,000万円クラスのクルマになるわけです。

以前のエントリでも書きましたが、クルマというのは個人と家の中間に位置するような高付加価値商品であり、そこに誰がどんな否定をしようとも属性がついてまわります。Tesla モデルSなら先のような属性があるわけで、それは確実にレストランやショップにとってはスジがいいということになります。

なにしろTesla モデルSのオーナーというのは
・1,000万円をクルマに支払うことができる懐を持つ
・新しいものが好きなアーリーアダプター層
・(EVということで)テクノロジーにも明るい
・(まるでiPhoneを買った人のように)熱心に人に勧める
そういう人です。

この構図、なにかに似ていると思わないでしょうか。スターバックスは完全禁煙(「コーヒーの香りを楽しんでいただくため」というのはコーヒー好きとしては詭弁と思いますがお上手)ということが人気の一助となりました。

「あそこのカフェはネット繋がんないからなぁ」
都会で人気のカフェはフリーWi-Fiであることが必須です。

「EV対応」は、すなわちそれ自体がブランディングになる、そんな時代なのでしょう。


2012年9月22日土曜日

工業製品としてのiPhone5の愛でかたと、iPhone5のキズで半年後におこること

iPhone5が昨日発売されました。

もちろんワタシも買い替えるのですが、ブラックにするかホワイトにするかどうしても実物を見ないと決められない(古いタイプの人間ですね)ので発売日に見てきました。

実際のiPhone5、こりゃ凄い。

何が凄いって商品としての商品力、もっというと工業製品としての作りです。
ハードウエアと書いてしまうとどうしてもチップとかロジックボードとかの話と混同してしまうので、もっと単純にケースの話に絞って説明します。

まず個人的にはこちらにしようかと判断するに至ったホワイトモデル。自転車好き、アルミ好き、切削加工好きとしてはこちらを選ぶのが吉です。背面のパネルはアルミということでアルマイトであろうと思われますが、MacBook Proなどのグレーのサテンっぽい質感とはまったく異なるパールマイカというか明るい白のきめ細かい質感が新鮮。

アルマイトで(アルマイトだったとしたら、ですが)こんなアルマイトは見たことがありません。おそらく非常に細かいブラストのあとアルマイト処理をしていると思います。

アルマイトはこういう梨子地の粒子にかけるとキラキラと粒子が光って見えるので、それでパールっぽい質感になるのですが、ケースのベゼル(外周)とは色がだいぶ違うのでもしかしたらアルミ合金の品番自体を(色のために)変えてあるかもしれません。ベースとなるアルミ合金の品番によってアルマイトの掛かり方と色は変わってきますし、もしそれが本当だったら凄まじいこだわりと言わざるをえません。

加えて、ホワイトモデルはエッジの面取り(C面取りといいます)がアルミ合金の色そのものなのでキラキラとして切削のシャープさも強調されており、金属加工として、アルミ合金としての素材感や加工感はより色濃く味わえるでしょう。

一方のブラックモデルは非常にシック。
こちらはPVD加工したロレックスみたいなカッコよさ。PDVでツヤ消しブラックのロレックスといえば藤原ヒロシさんが持ってて日本では有名になりましたが。同じ黒だけど表のガラス、サイド(それもツヤ消しとC面取りのツヤ有り)と背面のアルミ、 背面上下の樹脂、と質感とツヤ感(だけ)が違うってのはオシャレです。

いわばバットマンのコスチュームみたいな。
あれがダークでシックでワルっぽくてカッコいいのはラバー、レザー、ナイロンなどなど真っ黒ですが素材感が全部違うからです。

さて、iPhone5の工業製品としての見どころは、色を中心にした加工だけにとどまりません。背面中央のアルミバックプレートと上下の樹脂(?)ガラスのパネルの接合面、ここを触ってみてください。まったくの別々のパーツなのに接合面が完全ツラいち、段差がまったくありません。

これはAppleのオフィシャルムービー(5分40秒くらいから)でも明らかになっていますが、3枚のパネルを組み付ける時に、その厚さを計測して、多くのパネルのミクロン単位の厚みの誤差のなかから一致するものを選び出して接着しているワケです。いかに工業製品とはいえ、厚みなどのサイズは誤差がでてしまいます。この許容できる誤差を公差といいますが、その公差内で出来たパーツの中からさらに組み合わせを選んで組み付けているわけですね。

こちらは @HIRO_YUKIによる大阪弁バージョン。仕事早い。

これはまるで高級機械式腕時計のようです。
かつてここまで質感のためだけにやったデジタルガジェットはワタシのつたない知識では知りません。しいていうならVERTUでしょうか。ただしVERTUは機械式腕時計と同じように手作りでそれを実現しています。かつて高級品といえば、こうした精度の高さは手作り(=職人技)で行うしかなく、よってそれが高級品の根拠でもありました。iPhoneはテクノロジーをもってそれを実現しているワケで、目的は同じでもまったく違うアプローチというのが面白いですね。時代が時代ならマリー・アントワネットしか味わえなかったところがiPhone5は5000万人に広めています。

iPhone5というかAppleという企業は凄まじい勢いで高級品の民主化を行っているともいえますし、この質感を知ってしまった以上、他社にたいしては凄まじくハードルを上げてしまったともいえます。

さて、すでにiFixed.comなどでiPhone5のアルマイトがキズがつきやすいという声が上がっています。が、そもそもiPhone5はアルマイトですから、はげるものです。

たとえば、自転車のクランク(ペダルと繋がっているところ)はこんな感じになります。ベースはグレーのアルマイトです。

このアルマイトのハゲですが、もちろんエッジ部分まで色を付けているブラックモデルの方が目立つのは間違いありません(下地のアルミシルバーになるので)。たしかにエッジハゲるかもしれませんが、それは品質が悪いのではなく、単に「アルマイトはそういうもん」なのです。


ただ、個人的にはiPhone4のステンレスの方が耐久性は高いので軽量化のためとはいえ、アルミにしたのはどうかな…と思います。

そして仮にそうなってもそれを味として愉しむのが粋なオトナの選択といえるでしょう(昔の鉄砲のエッジのハゲが意外とかっこいい、みたいな)

半年一年後にアルマイト剥げたー、エッジが欠けた、という声は間違いなく続出するでしょう。で、「ま、こんなもんだよね」。という人がいたらそれはアルミに慣れてる自転車乗りということで…… ;-)



One more thing.
iPhone5はアルミですから、iPod nanoのように、実際はほぼどんな色でも付けることは出来ます。iPhone5sはもしかしたらカラーバリエーションができるかもしれませんね。

One more thing
より強いアルマイトとして日本のミヤキだけができる特殊アルマイト「カシマコート」を使うという手もあります。これだと金色〜茶色〜ダークブラウン〜限りなく黒に近い茶、という色になりますが。

One more thing
iPhoneもMacBookもこれ以上軽くするにはマグネシウムかカーボンを使うしかありません。がマグネシウムは電波を吸収したりといろいろ難儀なので、Appleがこれ以上製品を軽くしようとするならカーボンに走ると予言しておきます(少し根拠はあり)。

2012年9月13日木曜日

今夜iPad miniが発表されたら、それは後付け高級カーナビの命日になるかもしれない、という話

このブログを書いている数時間後にAppleの新製品発表が行われます。

 新しいiPhoneは確実に発表されるでしょうが、長らくウワサになっているiPad miniも発表されるかもしれません。もし、発表されたら、それは日本のハードウエアとしてのカーナビの命日になるのではないか。そんな、ちょっと日ごろ思っていたことを思うままに書いているので雑文御免です :)



このiPad miniですが、ざっくりまとめると
 1・サイズは7インチくらい(Retinaディスプレイにしつつ解像度を同じにするとこのくらいのサイズに)
 2・Googleマップからオリジナルマップに(表向きはGoogleとの契約切れ)
 3・もちろんSiriはある

という感じでしょうか。

もとより興味と思考実験(笑)としてクルマとナビゲーションとコミュニケーションというのが個人的なライフワークなわけですが、このiPad mini、実にカーナビゲーションにピッタリではないかと。

そしてカーナビといえば日本でさまざまなメーカーが後付け、ないしは純正ダッシュボードスペースに埋め込むモノをリリースしています。それらは20〜30万円超という高価格商品で、これら商品群がiPad miniの登場でその命脈を終えるのではないかと思っています。

というのも、もはやフィジカルな記憶媒体にマップを埋め込み、そこに店舗などのデータベースを格納して表示するという通信機能を持たないスタンドアロンのカーナビはあまりに不便だからです。例えばナビに表示されたガソリンスタンドを目指したらすでに倒産していた……なんてことはよく経験することでしょう。2012年版、なんていうナビの地図ではまったく間に合わないほど今、ガソリンスタンドは毎日のように廃業に追い込まれているのです。

それに元々のカーナビのアーキテクチャーをベースに追加に追加を重ねてカラオケ機能やメールやiPodオーディオコントロールやテレビなどを加えている様はDOS-Vモードとゲームがついたカラー液晶の、恐竜のようになった末期のワープロを思い起こさせなくもありません。

それならいっそ(これまでのiPadやiPhoneをナビとして使うアプリなどはありますが)iPad miniを埋め込か後付けでPND代わりに付けた方がいい。

まず1のサイズ。
 7インチというのはメーカー純正のダッシュボード埋め込みナビゲーション画面の最も一般的なサイズと殆ど同じです。最近ではテスラのモデルSの17インチ縦型ディスプレイとか、レクサスGSの12.3インチディスプレイなども出ており、大画面化する傾向にありますがこれらはまだ少数派です。



ちなみにテスラモデルSのナビはUI含めて完全にタブレット端末のそれでして、昨年スペインで開かれたモバイルワールドコングレスのNVIDIAブースに堂々と置かれていたことを考えるとおなじみTarga2チップを搭載していることは確実でしょう。つまりまんまタブレット端末みたいなものです)。

また、これまでのナビはおそらくダッシュボードへの収まりなど面でなんとなく横長が当たり前でしたが、クルマは前に進むものですし、多くの人はヘッドアップ(進行方向を常に上に表示する)でナビを使うので縦長である方が理にかなっています。

加えて前にWIRED誌にコラムで書きましたが、このサイズなら目的地に着いたら取り外して、そのままホテルで電子書籍リーダーとしたり、TwitterやFacebookをする、という使い方もできるわけです。

次に2のマップです。
 先のガソリンスタンドの例を出すまでもなく、地図を毎年修正しベニューを手動で探しデータを打ち込むようなことは非効率で、むしろもはや不正確といえるでしょう。ユーザー同士がソーシャルに修正しつつマップを作っていく方が最終的に精度が高くなります(このあたりはwazeが実現)



そして新しいiPhoneとiPad miniのiOS6はAppleオリジナルのマップが採用されるのがすでに明らかになっています(日本の地図はパイオニアの子会社のインクリメンタルPというウワサも)。

現行のナビで不便なのは、電話番号か住所、正確な名称を入れなければならないことです。その前段のプロセスとして雑誌なりネットなりでその場所を調べなければならない。そんなことをするくらいなら、foursquareのベニューなり、Googleで検索し、どんなところか調べてそこに直接行く、というほうがスムースです。

今、パソコンでGoogleで検索すれば、ガソリンスタンドがすでに倒産しているか、例えば夜、今から目的のガソリンスタンドの営業時間中にたどり付けるか、どのガソリンスタンドが安いのかなどが、リアルタイムでわかり、現にヨーロッパのVWグループのナビはGoogleナビになっており、すでにこれらの機能を実現しています。

3のSiriに関しては、OS側の制御も音声でできるということで全ての操作(ナビの呼び出し、目的地の検索、音楽などの再生)が出来るということです。MacOSの音声入力もそうですが、Appleの日本語認識の凄まじい認識精度は、これまでの数十年の日本のナビの音声入力はなんだったのかというレベルで…。


 さて、ここからが本題にして完全な思いつき。 Appleが自社のマップを最初からカーナビ利用を前提にしていたら実に面白いんではないかと思います。

そもそも、人はなぜ、クルマに乗るのか?それは移動の目的があるからです(走ること自体が目的、というケースもありますが)。

ではその目的地ないし目的のアクティビティは無数にあるなかから機械的に選ぶのかといえばそうではありません。多くの場合はメディアで面白そうだから、友達が良かったといっていたからといったことで知るわけです。

それならFacebookで先週友達が行って楽しかったというキャンプ場を目指したらり、Instagramで美しかった海岸を見に行ったり、miilで友達が美味しいといっていた山奥の蕎麦屋を訪れたりしたいはずです。少なくとも自分はそうしたいですね。

何を検索したか。
何処へ行ったか。
どのくらい時間を使ったか。
ユーザーのクルマはなにか。

クルマには善かれ悪かれ属性があります。トヨタ86やポルシェ911に乗っていれば「ああ、クルマの運転が好きなのね」とわかりますがそれだけではありません。そのクルマが高いか安いか(経済レベル)、4ドアなのかミニバンなのか(家族構成および行動様式)、どのブランドか(好み)などなど。 「いや、オレはクルマなんぞ興味ない。動けばよいのだ」という人も立派に“クルマに興味がない”という属性が付くわけですね。そもそも属性は自分が決めるのではなくてデータを解析する方が決めるものですし。

AppleIDの他にナビゲーションモードの時には任意で自分のクルマを登録させる。
すると登録の見返りとしてユーザーはそのクルマの大きさでは通れない道はナビのルートから避けるようにしたり、平均的な燃費からガソリンスタンドを自動的に表示したり。EVならステーションを表示させる。ユーザーの許可の元、同じ車種のユーザーが常にマップ上に表示されたりしても面白いかもしれません。自分と同じ車種のクルマとすれ違うと「おっ!」と思うのはクルマ好きならよくあること(余談ですがトヨタ86のプロモーションはオススメ峠ガイドなどではなくこういことを86自体に実装すべきではないかと思っています)。

 そしてここまでiPhone、iPadが普及しているということは一本の道の上にかなりの数のユーザーがいることになり、その位置情報から完全なリアルタイムで渋滞の情報を表示することも出来ます(これはトヨタやホンダの純正ナビでは実現していますが、あくまでホンダならホンダの新車を買った人同士のデータに限られています)。

さらにiAd位置情報版みたいな広告を用意すれば、優先してレストランやガソリンスタンドを表示することができるでしょう。 

今度のiOS6、新しいiPhone、iPad mini(出るなら)でGoogleのマップとの決別が明らかになっていますがその理由は「契約が終わった」のではなく、広告絡みであることは間違いがないでしょう。

さて、このAppleカーナビの上で、既存のカーナビメーカーや私たちはどうすればいいのでしょうか。コンテンツを持つ会社は、クルマのネット化で、ビジネスチャンスが生まれます。ベースとなるマップの上に乗せる情報を売るのです。 

個人的に最も分かりやすいのが食のベニューでしょう。
例えばmiilのベニューをマップに乗せる。軽井沢にドライブにいった時に、近所を検索すると友達が以前行っていて、美味しいといっていたピザ屋があることがわかり、そこに行く……というような。


そして例えば東京ウォーカーがオススメのアミューズメントスポットを提供する。
例えばカーサブルータスが美しい美術館100館の情報を提供する。
iPad miniですからオフィシャルサイトへのリンクも含めて必要な情報はすべて表示ができます。

既存のカーナビのように住所は表示されるが営業時間もどんな場所なのかも、料金も表示されなくて実は参考にならない…という残念な状態と対極の、本当に使える情報がナビ上に現れるわけです。 

これら情報はマップの上にレイヤーのように重なっていくようなイメージで、ユーザーは必要な情報のレイヤーを選択して表示させます。企業はそのレイヤーを売るのです。既存の出版社やネットサービス業者は、自分たちが保持しているコンテンツを収益に変えることができるかもしれません。 

さて、Google。すでに最新のAndroidのGoogleマップはすでに多くのAndroidユーザーのアクティブな位置情報から道路の渋滞をリアルタイムでVICSなど足下に及ばない精度で表示しています。VW系のカーナビでは実装されていませんが、Google AdSenseやGoogle AdWords的なものをマップの上に表示すれば(広告を出したガソリンスタンドやファミリーレストランを強調表示)、それは確実にGoogleの収益となるでしょう。 



GoogleはAndroidスマートフォン、タブレットの他にVWグループ(フォルクスワーゲン、アウディ、ベントレー、セアト、シュゴダ、ランボルギーニ)と組んでいます。そして、Microsoft(とそのBing)はフォードと米国トヨタと組んでいます。そしてApple。

クルマとは、属性があって嗜好性があって広範囲に動き、プライベート空間でありパブリックでもある存在。だからクルマは、デスクトップでもない、モバイルでもない第三のエリア、ネットが入り込む最後のフロンティアになるわけです。Google、Apple、Microsoft、御三家の次の主戦場は、クルマなのです。


One more thing
ネットとスマートフォン・タブレットとクルマという文脈では、最終的にそれこそdocomoやKDDIがSIMと回線を提供する代わりに月額でクルマ(特にシティコミューター)をリースするということにすらなっても構わないんじゃないかとも思います。

One more thingその2
クルマに通信が付けば、エンジンマッピングや回生ブレーキのアルゴリズム修正をオンラインでファームアップデートしてもいいんじゃないかとも思います。

One more thingその3
本文中にもあるトヨタ86の峠クエスト(オススメ峠ガイド)ではない別のプロモーション方法があったのではないか…と思っています。なぜなら峠クエストは元々クルマ好き86潜在顧客には効くとは思いますが「新しくクルマの楽しさを知ってもらう」という86のミッションにはそぐわないためです。

2012年4月18日水曜日

アウディ、ドゥカティを買収。その理由を考えてみた。

アウディ(正確に言えばフォルクスワーゲングループ)がドゥカティを買収するようです。

今日4月18日に取締役会で承認されるとか……。これを書いているのは18日の昼ですが、夜になれば詳細が伝わってくるでしょう。

Audi Said Set to Buy Motorbike-Maker Ducati for $1.1 Billion (Bloomburg)

ドゥカティはモーターサイクルの世界で確固たる地位とブランド力を持っているので、アウディはドゥカティというブランドはそのまま「イタリアの血潮流れるパッショネートなモーターサイクル」として存続させるでしょう。

Bloombergの記事によると今回の買収劇は同じくドイツのBMWとの競争を強化するため……とあります。たしかに世界的にもプレミアムカーマーケットにおいてメルセデスが一頭地抜けてはいますが、目下アウディのコンペティターはBMWであるのは間違いがないわけです。BMWはホンダとともに数少ない2輪車と4輪車を両方作っているメーカーですから、これで一騎打ち。

ですが、アウディはアウディブランドで(もしかしてDKWかヴァンダラーのブランドで)モーターサイクルを作るのではないかと思っています。なぜなら、それがアウディというブランドの出自を表すから。

実は、現在のアウディは4つのドイツ系ブランドが合併して出来たアウトウニオンが元になっています。そのアウトウニオンはアウディ、ホルヒ、DKW、ヴァンダラーという4つのクルマブランドが合併してできたブランドです。アウディのマークが4つの輪なのは、この4社が合併したアウトウニオンのマークを引き継いだからです。

30年ほど前までアウディはフォルクスワーゲングループの中の、「ちょっとだけ高級そうなフォルクスワーゲン」といった立ち位置でした。

今のようなプレミアムブランドの筆頭に数えられるようになった原動力は、TT以来のトレンドをリードしたデザイン、凄まじい精密な仕上げの内装のしつらえと機械的完成度とクルマから販売店、ウエブサイト、プロモーション、カタログの書体まで偏執的ともいえるほど徹底した統一感を打ち出しているところにあり、ワタシがアウディというブランドを尊敬するのはまさにその一点にあります。

クルマメーカーでAppleに匹敵するブランディングができているところを上げるとしたら、それはアウディでしょう(スティーブ・ジョブズはBMWになりたいといっていたとされますが)。

さて、突然なんのPR、ブランディングコミュニケーションも取らずにアウディブランドでモーターサイクルを出しても説得力はないでしょう。ご存知の通り、アウディ(フォルクスワーゲングループ)にはモーターサイクル部門はありませんから、技術的にはDKW、ヴァンダラーとなんの繋がりもありません。それだと「なんでアウディがモーターサイクルを?」と顧客に思われてしまいます。

ですが、プレスリリースにこう記すのです。
「実は我がアウディは、4つのドイツのブランドを出自にもち、その2つはDKWとヴァンダラーというモーターサイクルブランドでありました。当時、世からDKWは●●と、ヴァンダラーは●●なバイクと認められ好評を博しておりました……(中略)……そのヘリテージと思想を受け継ぎ、現代のモビリティとライフスタイルに新しい提案をいたします……うんぬん」

こうしたフレーズが付き、それが顧客に伝わればアウディとしては勝ちです。2輪車を作り、売上げを確保し、同じくモーターサイクルを作るBMWと対抗するだけでなく、同時に、アウディというブランドの「ヘリテージ」を世界中に示す格好の素材となるのです。

アウディのようなラグジュアリー商材は、もはやどっちの方が性能がいい、どっちの方が安い、というような比較対象で選ばれるマーケットではありません。メルセデスだってBMWだってアウディだって「どれも間違いなくいい」。その中でどのブランドを選ぶかは顧客にゆだねられています。顧客はテイストや自分のライフスタイルにどのブランドがフィットするか、それがブランドの選ばれる理由になり、ゆえにブランドはスタイル(世界観でもいいでしょう)を提案し続けなければならないのです。

ですからプレミアムプロダクツ、ラグジュアリービジネスにおいて、今、重要なのは「ヘリテージ」になっています。自らのブランドを強化するための歴史的価値、ブランド的正当性。自分たちのブランドは歴史を重ね、今度の新製品も歴史的必然から生まれたものというストーリーを作るのです。


つまり、一連の買収は「プレミアムブランド」に必要なヘリテージ、歴史的正当性のさらなる補完というブランディング軸足の行動。アウディのすすめる全方位ブランディング強化の一環ではないかと思っています。


補足
では、なんでアウディはロールスロイスに匹敵するウルトラ高級車ブランドのホルヒを復活させないのか、といった話はまたどこかで。

2011年10月26日水曜日

スティーブ・ジョブズ伝記。表紙と装丁で思うこと。

スティーブ・ジョブズの伝記を買いました。

全体として、あれだけの突貫作業(1カ月も発売を早めたとか)の時間のないなかで、装丁家、編集者、営業担当者、彼らの直属の役員といった方々が打ち合わせを重ねて意見を戦わせた結果なのだろうなぁ、みんなそれぞれ大変だったろうなぁ…というのが一番の感想です。



たしかに上巻のオレンジ(そういえばアップル創業時に「オレンジ」っていう後追い会社があったそうですね)、下巻のグリーン(なんとなく“アップルグリーン”に見えなくもない)ともに刺し色としてさほど効いているとも思えませんし、帯が入ると思いっきり普通のビジネス伝記っぽい感じになっていて、Appleユーザーとしては確かに納得がいくものではありません。が、さりとてソーシャルメディア上で話題になっているほど目くじらをたてていうほどではないとも思いました。

帯を外せば、だいぶ雰囲気かわりますし;-)



むしろ帯やオレンジの刺し色よりも個人的には裏表紙の写真の使い方の方が気になります。



あぐらをかいたJobsの裁ち落とし(一面に写真を引くこと)が日本語版では切り抜きで中央に配されています。バーコードなどのレギュレーションもありますが、切り抜きになっていることもあいまって、なにかちんまい感じ。本として小粒になっていることは否めないでしょう。“Appleファンとして”率直に言えば「確かに残念」であります。

大前提としてワタシ自身は、Jobsを尊敬する生粋のAppleユーザーです。JobsがAppleを追い出されたあとのアメリオ体制のどん底にあるときから途中強制的に2年ほどWindowsを使わされた時をのぞいて今までずっとアップルを使ってきました。初めての仕事で貰ったギャラを全部突っ込んで買ったPowerBook190Cs(世紀の大駄作といわれたPowerBook5300のノンPowerPC版という情けないモデル)が初めてのApple製品といえばおわかりかと。以来、ずっとApple製品とともに雑誌編集の仕事をしてきました(詳しくはLinkedInで)。このブログのタイトルだってまんまです ;-)

さて、ここで考えたのは、もうちょっと別の側面です。

ワタシたちのようなJobsファン、Appleファンは、結局どんな装丁だろうと間違いなく買うでしょう。むしろこの本の売り先は、the Rest of usもとい、それほどJobsやAppleのことを知らない人たちのはず。

彼らには、英語版そのまんまの装丁では、きっと売れません。なぜならその人たちは“Jobs的なるもの、Apple的なるもの”をまだ知らず、ゆえにJobs的表紙は響かないからです。

Jobsファンとして、Appleファンとしてワタシたちがこの本を一番読んで欲しいのは、そういう人たちではないでしょうか? そして、版元の講談社もそういう人たちをターゲットにしているはずです。なぜならこれはビジネスだから。最初からワタシたちのような純粋Jobsファン、Appleファンはベースラインとして織り込み済みです。

「Appleのことを例に出すと社内で叩かれる」なんていう会社がいくつもある日本です。ワタシは、そういう風潮の会社にいるような、Jobsのことを最近知った人にこそこの本を読んでもらいたい。まだ実は読んでないけれど、この本にはきっとその何かがある。

そう考えれば、表紙がJobs的でないということは、ささいなことに思えます。いや、むしろ帯があって良かったとさえ思う(ついでにいうと帯の下になにもないのは装丁家のせめてもの矜持かと)。これを機会に、より多くの日本人に読んでもらい、そこから何かを学んでくれれば、日本や日本の企業も変わるかもしれない。少なくとも変わるきっかけにはなるかもしれない。

この本をもっと多くの人に読んでもらって、ワタシたちJobsファン、Appleファンが感じているような、“よりよい何か”を、日本のいろいろな人に知ってもらうことの方が、より上のレイヤーでJobs的なのではないでしょうか。

なんてったって「世界をより良く変化させていくこと」が彼の人生そのものだったのですから。


2011年10月24日月曜日

miilはもしかして食いしんぼうのキラーになる、かも。

正直自分でも(ちょっと)思うのですが、ワタシ、食いしんぼうだと思います:D

ただ、自分で自分のことを「グルメ」といったことはありませんし、あんまりこの言葉は好きじゃないんですよねぇ。自分で自分のこと「グルメ」っていうのは結構恥ずかしいことなんじゃないかと自分のなかでは思っています。

とはいえ、 @taromatsumura にこんなこと言われたり(笑)、いきなり友達から「丸の内で会食したいんだけどカジュアルめなとこどこ?」と聞かれたりもしていまして、自他共に認める食いしんぼうであることは否定しようがありません。

特にTimelineを見ているかたはやたらワタシがいろいろなところで美味しいものを食い散らかしているように思えるかもしれませんが、3.11以来、近況報告やブレスト的なミーティングをすべてランチミーティングにしているためでもあるんですよ;-)

さて…いいわけはそのくらいにして。

今日、miil.meというサービスが(ひそかに)ローンチしました。


食べ物を撮影してソーシャルに投稿して、共有するのですが、Instagramのようなサービスと違うのは、食べ物に特化して、そこに「いいね!」的な「食べたい!」ボタンがあることです。


写真クリックでiTunesにとびます。
ボタンとかiPhoneアプリのテンプレを使っていないのは
Android版との整合性をとるためでしょうか。

で、この「食べたい!」ボタンがこのサービスのキモであります。「食べたい!」ボタンを押すと、マイページの中に、そのお店なり料理なりが蓄積されていくのです。

これまでFacebookやTwitter、Instagramで流れてきた美味しそうなところは、ふぁぼったり、せっせと店名やリンク先をEvernoteに入れていたんですが、これを再び「塩ラーメンが食べたいけれど、こないだソーシャルで流れてきたあのお店は…」と探すことはあまりありませんでした。

このmiil.meなら、それはリストとして一括しているわけですから、きっと活用できるでしょう。なぜなら、その写真には位置情報も電話番号も記載されているのですから。なにしろその写真から店に電話もかけられるのですから。これは便利ですねぇ。

意外に思われるかも知れませんが、ワタシは、食べログやぐるなびをほとんど使っていません。

使わない理由は簡単です。

不特定多数の集合的評価であり、美味しい美味しくないは主観的部分も多いので、高い評価が必ずしもそれが自分の好みにあうかわからないからです。
(ついでにいうと、これらのサイトの評価はだいぶ店の雰囲気にポイントが左右されているように感じています)

それよりも、自分がリアルでもソーシャルでも知っている人の勧めるものの方が信頼がおけます。なぜなら、ワタシの好みを知っているからであり、ワタシもその人の好みを知っているからです。AmazonでAmazon内の書評を参考にしたことは一度もありません。それより知っている人が「読了」「オススメ」といった本をAmazonで即ポチすることが殆どです。

そう考えると、miil.meでマイページに蓄積された「食べたい!」店や料理は、その個人にとってキラーになる可能性を秘めていると思うのです。


そして使ってみて、最初に思ったことは、foursquareチェックインをInstagramのようにやって欲しいなぁ、ということです。

最近、食べ物屋さんに入ってfoursquareアプリでチェックインすることがなくなりました。なぜならInstagramに料理を撮って投稿すればついでにfoursquareにチェックインできるからです。いわゆる「Instagram待ち」状態ですね:) そして、Instagramで料理を投稿するときに無言のまま投稿する人はほとんどいないのです。かならずなにかコメントを入れるわけですし、不味くてわざわざ投稿する人も少ないですよね。それにInstagramで料理の写真投稿する人、多くありません?(自分だけ?)

というわけでfoursquare投稿ができるようになるとInstagramとの使い分けができていいんじゃないかなと思います。これができれば間違いなく料理の時にはInstagramを使わなくなると思います。

なぜなら、写真の加工が凄くいいから。ユーザビリティに個人的興味がある自分にとっては色ころびを縦軸(彩度明暗)横軸(色温度)で直接写真の上からいじれるUIはお見事としかいいようがありません。これなら写真の色の知識がなくとも直感的に操作できる。iPhotoやPhotoshopに付けてもいいくらいじゃないかと思うくらい素晴らしいと思います。

最後にもうひとつ。
他にも、いくつかこんな機能があったらいいなぁというのが思いつきまして、それらは実はすでに関係者にお伝えしています;-) 実装されるか否かは、もちろんmiil.meの皆さんが判断することですし技術的に難しいかもしれませんので分かりません。し、されなくても気を悪くしたりしませんので御安心を;-) >関係者各位

でも、実装されたらその暁には、ワタシのアイデアだよ!と自慢させていただきます。

いや、そのくらいちょっと期待したいんですよね。ビジネス的にもひょっとするとひょっとするかもしれません。すくなくともそう思えるサービスがあるのは嬉しいことじゃないですか。


2011年9月28日水曜日

ロールスロイスにこそEVは相応しい。

誰もが認める高級車、ロールスロイスがEVの実験を始めています。
どうやら実験車両の102EXで世界中でキャラバンしているらしく、今、そのクルマが日本にあります。

OPENERS ロールス初のEV「102EX」試乗会の模様を写真でお届け!

実は、自分もちょろっと乗れる予定だったのですが、諸般の事情にてお流れに…とほほー。

さて、いよいよ街中にEVが走り始めた今日この頃。Teslaロードスターや日産LEAFが街を走っているのを見ると、たしかにこれはちょっとした未来感であります。

三菱自動車は市販EVに軽自動車ベースのi-MiEVを選びました。それをメーカー希望小売価格260万円でリリースしたことは、もう敬服に値するとしかいいようはないでしょう。

さて、ロールスロイス。

誰もがひれ伏す高級車でありますが、そのブランドの栄光の歴史は戦前のシルバーゴーストというクルマが評判を得たことに始まります。


ゴーストなんていうおよそクルマに似つかわしくない名前がつけられたのも、当時としては驚異的な静粛性と信頼性の高さを誇ったからで、エンジンをかけてもその上に立てたコイン(20ペンス?50ペンス?)が倒れない…というのが売りだったわけです。

今のロールスロイス・ファントム(これも幽霊の名前ですねぇ)が走っているのを見ると驚きます。その巨大なマス感、凄まじい仕上げ、Meanな意匠、そして静けさ。日本の高級車も凄まじく静かですが、ロールスの静けさもまたちょっと違う感じです。

ロールスロイス(や高級車といわれるクルマたち)は、

エンジンの音を下品なものと見なし、より静かに。
エンジンの振動を野蛮なものと見なし、より振動少なく。
エンジンの排気ガスを汚物と見なし、より少なくクリーンに。

という歴史的文脈にそって進化してきました。
これって、モーターじゃないですか。結局。

ガソリンエンジンなどの内燃機関の進化とはすなわちこれモーターに近づくための進化であったのです(このヒントは20年ほど前に読んだ自動車評論家の館内正さんのエッセイに拠ります)。

加えてエンジンの味が、鼓動が、音が…というのはそもそもロールスロイスには求められていませんし(基本的にはロールスロイスはオーナーが後ろに座るもの、ベントレーはオーナーが運転するもの)。


さて、現在のテクノロジーにおいてEVの欠点は高いことと重いことです。その原因はガソリンに比べてまだまだエネルギー密度の低いリチウムイオン電池が高価で(ガソリンエンジンなみの航続距離を求めるなら)非常に重くなることにほかなりません。

ところが、世に言う高級車というのは、そもそも高価なものですし、重いものです。バッテリーが300kgあったとして、重さ800kgの軽に乗せるより、元から重さ2000kgの大型車の方が影響は少ない。さらに、そのバッテリーが130万円するとして、車両価格が130万円クルマに積んだ場合価格は2倍になりますが、もともと3000万円のクルマだったら価格影響は5%弱。まぁ消費税レベルですわな。

加えて高級車というのはコストをかけられるものです。まだ普及していないカッティングエッジで高価なテクノロジーは金に糸目をつけない高級車だからこそ採用することができるのです。高級車(やスーパーカー)が戦前からそういった役割があったのは事実です。ディスクブレーキ、パワーステアリング、エアコン、オートマチックトランスミッションすべてそうです。持てる者が実際に使ってダメ出しして、その技術が降りてきて実用車に採用され普及するというのがクルマの(というより機械の)歴史でもありました。つまりは世のため人のためにベータテスターになるというのが高級車に乗る人間のNoblesse Obligeなんです。あ、アーリーアダプターともいえますな ;-)

さらにもう一つ。
高級車というのは、社会的立場のある人間が乗るものです。彼らがこのエコブームの中で、でかいガソリンエンジンで排気ガスを出しながら走るクルマに乗る…ということは明らかにこれからマイナスとなるでしょう。

彼らはEVに乗ることで(たとえポーズであったとしても)大きな高級車にのることの社会的なエクスキューズが成り立つのです。

だから、2011年のテクノロジーでは、EVは高級車にこそ相応しいのです。

日本のメーカーはEVを出すにあたり、大衆車を選びました。それは一気に大衆車からEV化して普及させればCO2削減(CO2削減が本当に必要かはここでは問いません)や省エネルギーへのインパクトが大きいからと考えたからだと思います。HVも含めてそこには日本の自動車メーカーの尊敬すべき努力と実力があります。

一方、欧州メーカーはHVもEVも高価なSUVやサルーンからやろうとしている。いかにも封建的というか階級的というかヨーロッパ的ですなぁ。

んじゃ欧州封建社会でも日本的平等でもないアメリカのTeslaのクルマ文脈的立ち位置はどうなのよ、というのはまたの機会に。



おそらくこのエントリーの数日後からロールスロイス「102EX」のインプレッションが出てくる事でしょう。たぶん、この見立ては大枠で外れてはいないと思いますよ。

で、結局何がいいたいかというと、そんなヨーロッパ的なEVロールスロイス「102EX」に乗り損ねたのが悔しいなぁ、自説を体感したかったなぁ、と……それだけなんですけどね :)





2011年9月1日木曜日

LinkedIn リンクトインが便利だと思った瞬間



半年くらい前からLinkedInを使っています。
いよいよ年内に日本語化されるとはいえ、今のところ英語なのでやはり取っつきにくい部分はありますが、気がむいたときにプロフィールを編集したり、Signalなどのいろいろな機能を試してみたり。


ワタシのプロフィールはこちら

さて、このLinkedIn、巷では転職サイトとかキャリアアップSNSとか言われていますし、それも一つの側面でありましょう。でも Joi さんが以下のように語るように

Joi曰く日本でLinkedinをどう展開するかは「まだ決まってない」

LinkedInはキャリアを自分で管理し、学び続けるための仕事効率化ツール - Joi Ito | TAROSITE.NET

自分のキャリアを見つめ、ポートフォリオを作り、将来のために使うツールなのでしょう。

とはいえ、そういったビッグピクチャーを最初から描きつつ新しいサービスを使うのは敷居が高いと思うケースも多いと思います。

かくいう自分もどちらかというとそうだったのですが、しばらく使ってみてひとつ、これは便利だという使い方を発見したのでご紹介します。

その方法とは、単純に名刺をもらった人を片っ端からLinkedInで探し、そしてConnectしておくことです。

こうすると、いちいちパソコンやスマートフォンのアドレスブックに手打ちで連絡先をいれなくても「とりあえずなんとか繋がっている」という感覚があって、手間もかからずとても気がラクになるのです。

LinkedInで繋がっていれば相手が職を変えようとも連絡が取れますし、転職したらそれが直ぐにわかります。特に、威力を発揮するのは外国の人と名刺交換したときです。これまでは外国の人と名刺交換しても、特に直近でコミュニケーションを取る用事がなければ直ぐに疎遠になってしまいませんか。かといってKeep in Touchということでメールをするのもちょっと気が重い。なにしろ用事はないのですから交換日記というわけにもいかないですし。

LinkedInなら、そんなメールを出す必要もない。他のSNS同様にウェブをたまに眺めていれば、彼ら彼女らがなにをしていたり何を考えているかがざっくりわかるからです。

もちろん日本人同士でもこれは同様です。

そしてこれに気がついた時にピンポイントな使い方かもしれませんが、LinkedInはとても便利なサービスだと思ったのです。

FacebookがひたすらユーザーをFacebookの画面を見続けていくようにさまざまな施策を行っているのとは対照的に、LinkedInはユーザー滞在時間を重視していないといいます。

たぶん、LinkedInの設計思想自体も、こういう使い方を(ある部分)想定しているんじゃないかと思います。そう思う一つの根拠としてたとえばこちらのようにCompanyをフォローすると現れるその会社に勤めている人が前職はどこにいて、転職してどこにいったかがわかる機能があります(この機能の名前がわからないw)。

これは、同じ個人SNSであってもFacebookにはない機能です。なぜなら、サービスのアーキテクチャーとしてFacebookにはそれがないからです。出発点が違うというか骨格が違う感じ。そんな感じ。

こう考えれば、FacebookとLinkedInの使い分けもおのずと明確になるのではないでしょうか;-)

One more thing

弊社で、ちょっと複数の海外企業にアプローチをかけようと思っています(そのうちの一つは現地に行く事も厭わないつもりでいます)。それである方に繋いでもらうことにしたのですが、「森さんと会社のプロフィールをまとめたものはありますか?」と聞かれました。その時「あ、LinkedInのプロフィールを先方に送ってもらえれば大丈夫と思いますよ。補足部分はメールしますね」と口から出たのです。それはまったくもって自分で自分のことに驚いたくらい無意識なことでした。

2011年8月24日水曜日

Windows Phone 7(au IS12T)にあってiPhoneにない決定的なもの

先日、@taromatsumura のお誘いで、Windows Phone 7のトークショーに(しゃべる方で)参加してきました。


このときの模様は #WinPhoTT のログを見ていただければ一連の流れはわかっていただけると思いますし、自分の発言と思い切り重複しますが健忘録的に。

結論からすると相当気に入りました。生まれて初めてマイクロソフト製品で積極的に欲しいと思った…と言えばどのくらいいいのかがわかっていただけるかと ;-)

Windows Phone 7では、People Hubという人軸のUIがOSレベルで組み込まれていています。やっとこういう構造のスマートフォンが出てきてくれたか、という感じ。

以前、@tatari76 にBlackBerryを見せてもらった時に関心したことを思い出しました。BlackBerryは、連絡を取りたい人を選び→その人に対して電話をするのか、SMSをするのかEメールをするのか、それともソーシャルメディアのポストを見るのか(ないしはDMをするのか)を選ぶという順番になっているのですね。

これを教えてもらった当時、ああ、これだなと思ったワケです。

Windows Phone 7のPeople Hubも似たような設計思想なんです。
そのパネルにFacebookもTwitterもLinkedInもすべてのポストが一括して流れてきます。そして自分に関連するreplyが流れてきてもそれを一括に表示してくれる。


誰かに連絡を取りたい場合は、まずは人を選び、次にそのアドレス帳(みたいなもの)に住所も電話番号もSNSのアカウントも全てが一括で表示され、そこからどの経路で連絡を取るかをユーザーは選ぶのです。

一方、iPhoneはAさんに連絡を取りたい場合は、まず、Twitterにするか、電話にするかSMSにするか、アプリをタップして立ち上げ、そこから目的の人を探します。当たり前のようにそうしていたけれど、何か違う。手段と目的がひっくり返っているような。

トークショーではこれをテレビのリモコンにたとえて話しました。

家から帰ってきてリモコンを掴み、テレビをつける。このとき、SONYのテレビのリモコンは1チャンネルのボタン「1」を押せば、テレビの電源が入り、同時に1チャンネルが表示されます。ところが一部のリモコンは、1を押してもテレビの電源が入りません。まず「電源」ボタンを押して、テレビをつけ、しかるのちに1を押すと1チャンネルを見る事ができます。

後者はおかしいのです。

ワタシは「テレビの電源を入れたいから」リモコンを手にしたのではないのです。「1チャンネルが見たいから」リモコンを手にしたのです。

この差は大きい。自分でテレビを買うようになってからずっとなんだかんだ言ってもSONYを買い続けている理由の一つがここにあるくらいです(たぶん一部の他社はそうでしょう)。

iPhoneのコミュニケーションというのは、後者のリモコンに近い。

で、BlackBerryの思想を知ってから、どうにかそういう使い方ができないかとiPhoneのアプリの電話、SNS、Twitter、Facebook、Beluga、Skypeなどをすべて「Communication」フォルダに入れて無理矢理使ってみたりもしたのですが、どうにもやはりダメ。ホーム部分のど真ん中に「連絡先」アプリをおいてみてもダメ。なんとなれば、各アプリ内で結局もう一度目的の人を探さなければいけないし、iPhoneの(MacOSも)「連絡先」とソーシャルメディアが前提でないからです。Lionでやっとアドレスブックにソーシャルメディア欄がつきましたれども。

Windows Phone 7はそれができる。OSの骨格が違う、というようなイメージです。

スマートフォンは音声通信という意味での電話でないことは自明です。スマートフォン=コミュニケーションツールと考えるなら、私たちは何をしたいのでしょうか。誰かとコミュニケーションを取りたいからそれを使うのです。Eメールを使うのかTwitterで近況を見たいのか、急ぎで電話をしたいのか、そんな手段はその次。どうでもいい。誰かとコミュニケーションを取りたいのですから。



Windows Phone 7は初めての「ソーシャルネイティブな」OSであり、初めての「ソーシャルネイティブな」スマートフォンなんだなと思います。

iPhone(とMac OS XとAndroid)になくてWindows Phone 7にあるもの。
それはソーシャルに対するネイティブ感でしょう。

余談ですが、ウェブサイトのデザインで今年から来年にかけて、こうしたタイルデザインがすごく流行るんじゃないかと。Flipboardとかもそうですし。実は自分の会社のサイトもそうしようかなぁと思っているのですが、仕様書書かなきゃと思ってはや2月たっちゃったりしています :(






2011年8月21日日曜日

Startup Weekend Tokyo スタートアップウィークエンド に行ってきた。

8月20日にStartup Weekend Tokyoに行ってきた。


Bithausの石原くん(@tatari76)に誘われて、ちょっといろいろ話を聞きにいった分けですけれども、思った以上に面白くて刺激的でした。

このStartup Weekend、ウェブを見れは内容は一目瞭然なのですが、「アイデアはあるんだけど、プログラムはわからない」「コードはかけるんだけどアイデアはない」「アイデアもコードもかけないけれど人脈はある」みたいな人たちがいきなり集まっていきなりアイデアを出し合ってそれぞれチームを突発的に作り、そのチームで3日間で新しいサービスなりアプリなりを投資家や企業にプレゼンテーションできるモックレベルまで作っちゃうというイベントです。

東京以外にも次は福岡など各地でやってて、各大会のトップ同士が競ってさらに世界各国で同様のイベントで勝ち上がってきたグループと最後はアメリカでチャンピオンを決める、と。チャンピオンやスジの良さそうなプロジェクトにはVCやら企業やらがサポートして本格的に事業かを進めると。スタートアップの天下一武道会みたいなものかも ;-)



それこそゴリゴリとホワイトボードの前で議論を進める様は映画「ソーシャルネットワーク」のワンシーンのようでもあり非常にポジティブな雰囲気に溢れていました。

Bithausのプロジェクトとしてアフター311のこれからのワークスタイルのありかたみたいなものをインタビューして回ったのですが、印象的だったのは必ずしもIT系とかフリーランス、個人事業主の人ばかり…というわけではなかったことでした。

彼らは必ずしも自分でスタートアップをやろうというワケではないようです。
自分の視野を広めたいとか。
まったく新しい人と接してみたいとか。

それもまた個の天下一武道会みたいなものですね。
少なくともその場で自分がどんな人間でどんな能力を持っていてどうその場に貢献できるのかをプレゼンテーションしなければならないのですから、コミュニケーション力は必要になるでしょう。

いわゆる異業種交流会みたいなパーティーで名刺交換をしたとしても、そのコネクションが実際に何かの役に立つかといえば、実際はそうではないでしょう。少なくともレストランなどを貸し切って行うそれらはほぼ合コンに近い感じですし。

こうした参加の仕方は、本来のStartup Weekendの趣旨とは少し外れるのかもしれません。

ですが、彼らは7500円の参加費を払って貴重な土日をフルに使って参加し、その時間のなかで自分の知恵、知識、アイデアをフルに無償でチームに提供してプロジェクトをドライブさせているのですから、高い意識がないと参加できないでしょう。それに人と知り合うだけが目的ならチーム内で「使えない人間」の烙印を押されてしまうわけで。

これからの働きかたを考える場としてのスタートアップウィークエンド。こうした場所が小さくとも同時多発的に日本の各地に出来たとき、点と点が繋がって面になったとき、少しは日本のワークスタイルや起業のスタイルが変わる時なのかもしれません。その初期段階をかいま見れた気がします。

今日21日は最終日で審査の日。どんなサービスが生まれるか楽しみです。参加者の皆さんお疲れさまでした。







2011年8月19日金曜日

「グランツーリスモ5」の可能性

「グランツーリスモ」にある物理エンジンには、どういう可能性があるのでしょうか。

「グランツーリスモ」を製作したポリフォニーデジタルは、EV時代のクルマメーカーになる可能性があるのです。

各クルマメーカーはハンドルとステアリングを物理的に切り離して操舵する「ステアリング・バイ・ワイヤ」を研究しています。ただ、これには個人的にはいくつかの問題があると思っています(もちろんクルマメーカーはわかっていると思います)。それは信頼性の面、そしてステアリングフィードバックの件です。

ステアリングフィードバックとはハンドルを通じて、その路面が滑りやすいのか、滑らかなのか、砂利があるのかなどを伝えることです。最近のクルマではそれを極力無くす方向にありますが、それはそれで危険でしょう。というのも滑りやすいということが運転者に伝わらなければ、それと知らずにむちゃな運転をする可能性が高いからです。

地面が凍っているとわからずに革靴で普通にあるけば転んで痛い目にあうでしょ? ;-)

ステアリング・バイ・ワイヤでは、物理的なシャフトやリンクでタイヤとハンドルがつながっていませんからそういう可能性が多々にあるのです。

そこでグランツーリスモです。このゲームではステアリングコントローラーを使うと、
人工的なステアリングの感触をモーターで作っているのです。まだまだ実物のクルマそっくりとは行きませんが、96kbpsのMP3くらいの感触はすでにある。少なくとも、フロントタイヤが滑ってラインが外にはらんでいるなぁ…くらいはわかる。

ということはポリフォニーデジタルはすでに”物理的な接続が無くとも”ステアリングインフォメーションを出すためのアルゴリズムとプログラムをすでに持っているということです。

これをさらに精度を高めてステアリング・バイ・ワイヤの実車のハンドル側のモーターの制御系に使ったらどうでしょうか。
彼らは10年以上、初代プレイステーションの時代からの蓄積があるのです。クルマメーカーが今から開発するよりも、彼らのアルゴリズムを買う、という可能性もなくはないでしょう。

実は、彼らのアルゴリズムはステアリング・バイ・ワイヤでなくてもすでに利用できるかもしれません。

今、道を走っているクルマの多くは電動パワーステアリングを使っています。
これはハンドルの戻る力やハンドルの重さをすでにモーターで人工的に”演出”しています。
明日、どこかのクルマメーカーが電動パワーステアリングのフィーリングをよくするために
ポリフォニーデジタルのドアをたたく…かもしれません。いや、すでにどこかが取り入れているのかも ;-)

ステアリング・バイ・ワイヤの話はあくまで一例でしかありません。クルマがEVになるにつれ、きっとこういう異業種参入が増える事でしょう。

ただし、それは「ハードウエアがコモディティ化するからAppleがクルマを作るかも」というのとはまったく別のリアルなレイヤーで起こると思います。

「グランツーリスモ5」にゴーストはあるか。


昨年、グランツーリスモ5(以下GT5)が発売されました。
そら恐ろしいほどのリアリズムと、あまりに深く広大なゲーム性は3年間待ったかいがあるというもの。
猿のように毎晩やっている自分と同じ人間が世界中に何十万といるわけです。いやすごいね。


グランツーリスモシリーズが他のドライブゲームを圧倒的に凌駕する点は、どこだと思いますか?
グラフィック?操縦性のリアリズム?世界観? どれも間違いではないのですが、
それはゲームの表層に現れた、氷山の一角のようなものでしかありません。

海に隠された氷山の本体、グランツーリスモの根っこにあり、凡百のドライブゲームにないもの、
それは物理エンジンです。

グランツーリスモでアクセルを踏む→エンジン回転数が上がる→タイヤがスリップする→スピードが上がる…
この一連の動きはすべて実車のシミュレーションから成り立っています。つまり実車のエンジンの排気量、圧縮比、ボアストロークから「実物だったら発生しうる出力」をリアルタイム演算し、それを実車のギア比に応じて減速を計算し、路面のミュー(摩擦抵抗)とタイヤ幅と直径とゴムのヒステリシスと単位当たり面積(車重など)を演算してスリップの具合を画面に表示しているのです。ちなみにトラクションコントロールは実車と同じようにトラクションコントロールがない状態のシミュレーション(エンジン出力)をして、そこに「トラクションコントロールのプログラム」をかぶせて表現しています。

では他のドライブゲームはどうかといえば、アクセル開度、車速などに応じて考えられるいくつものパターンを用意しておいて、それを次々と切り替えているのです。それでもリアルに見えるのは、もちろんゲームマシンのパワーが上がってパターンの数と切り替えが膨大な数になっているから。つまりはいくらリアルに見えても、それは力技であってやたらと細かい紙芝居みたいなものなのです。

さて、グランツーリスモ。
このゲームが恐ろしいのは、その物理エンジン故に、プレイすると運転しやすいしにくいはもちろん、クルマの軽さ重さ、慣性力、車体剛性の高い低いが感じられる領域にまで到達したという点にあります。そう、コントローラーを通じて実体感を持つに至ったのです。

さらに恐ろしいのはハンドルコントローラーでプレイした時です。ハンドルコントローラーにはモーターが入っていて、縁石を乗り越えた時の感触、タイヤが滑っている時の感触、アスファルトに砂が浮いている時の感触、それらすべてが分かります。すべてが違う表現で再現されています。



つまり、グランツーリスモでドライブするクルマは、PS3のCELLチップの中に「物理計算で形作られた本物のクルマ」がモニタ上で走っているのです。

クルマが馬車に戻るとき


自動車が生まれておよそ120年。

ゴッドリープ・ダイムラーが1886年に発明したそれは、当時「馬なし馬車」と呼ばれていました。由来は文字通り馬が引いていないのに「自分で動く車」だからにほかならないのですが、同時にそれはクルマの成り立ちをも表していたのです。

……というのも当時のクルマは馬車とほとんど同じ構造だったから。馬車は車輪とサスペンション、それらを支えているフレームをまとめたシャシー(車台)と、ボディと内装は別物で、お客さんはシャシーを馬車屋から買い、好みのボディを乗せていたわけですね。自動車が普及するに連れて、馬車屋はこんどはクルマのボディを作るようになっていきました。もちろん、それを買えたのは、ほんの一握りの富裕層でした。彼らは、自分のわがままと美意識をクルマのボディに求めます。ですから元馬車屋に思い思いのボディを作らせ買ってきたシャシーに乗せたのです。

これをコーチビルドいいます。そして、その業者をコーチビルダーといいます。コーチ(Coach)とは、馬車のことですね。

なかなか想像つかないことかもしれませんが、だからロールス・ロイス、ベントレー、アルファロメオ、キャディラックといった戦前の超高級車は、車名が同じだったとしてもボディが同じとは限らなかったのです。いや、むしろ同じ“吊るし”のクルマは殆どなかったといってもいいでしょう。マリナー、パークォード、フーパー、ヴァン・ヴォーレンといったコーチビルダーが、お客の要望に応え、職人技と美しさをひたすらに競っていたのです。

性能的になんら今と比べるところのない戦前のクルマたちが、人々を振り向かせ、クルマに詳しくなくとも何か超然としたもの感じさせるのは、だからでしょう。

ところが、第二次世界大戦で状況は一変します。戦後、社会経済が変化し、モータリゼーションが訪れ、クルマの大量生産が始まりました。車体は量産に向き、ボディとシャシーが一体化された強固なモノコック構造に変化しました。モノコックはボディとフレームが一体ですからボディを乗せかえるという芸当はできません。で、コーチビルダーは廃業、さもなくば大メーカーに吸収されコーチビルド文化は途絶えてしまったのです。

時はめぐって、2011年。2010年のリーマンショック後の社会意識の変化をきっかけに「絵に描いた餅」でしかなかったEVがいよいよ現実のものとなりつつあります。三菱iMiEVの発売に日産リーフの発表、テスラの日本上陸。2010年から2011年にかけて、後に日本のEV元年と呼ばれることになるでしょう。

クルマがEVになれば、モーター、バッテリー、制御機構、ソフトウエアがコモディティ化します。これは誰もが予想できることでしょう。パソコンやスマートフォンを見れば明らかなようにメーカーはそれらを組み合わせ最適化し、シャシーを作るようになるかもしれません。床下にバッテリーを置き、前か後ろにモーターと制御機構を置くことでパソコンでいうロジックボードのようなプラットフォーム構造が取りやすくなります。

ただ、ここで声を大にしていいたいのは、だからといってハンドリングや衝突安全性、乗り味といった部分は一朝一夕にできるものではないということです。

それは圧倒的に今あるクルマメーカーの有形無形のノウハウの蓄積があり、クルマメーカーの領分なのは明らかです。どこかのメーカーがプラットフォームとしてシャシーだけを販売する可能性は十分にありえますが、だからといって素晴らしい乗り味のクルマを作れるか、ということとは別の次元であります。それはAppleのMacBook Airとその他Windowsのノートパソコンが殆ど同じパーツを使っているのにデザイン、質感、使い心地が圧倒的に違うという事実が証明しています。


さて、仮にEVでパーツがコモディティ化したとすると、そこに必ずヒトは差別化を求めていくものです。人と違ったものが欲しい、と。好きなデザインのボディ、少数限定のボディを求める人々が出てくるはずです。求める人間がいれば応える人間が出てくるものです。ワンオフ、もしくは極少数のためのデザインや、ネットでボディのオーダーメイドができるようになるかもしれません。少なくともテクノロジーの進化は、かつてより少量生産も多様な意匠のボディも作りやすくしています。

そう、120年の時を経て、コーチビルドという文脈でクルマは再び馬車に戻るのです。

さらにEVにはソーシャルメディア、ジオロケーション、スマートグリッド、ナビがネットで融合します。

このあたりはWIEREDに僭越ながらコラム「クルマが「パケット」。そして道路は通信網となる」を書かせていただきました ;-)


コンポーネンツ、コーチビルド、通信の分野でその周辺に新しい産業と経済が興るでしょう。それは、新しいクルマの楽しみ方が生まれる時でもあります。今よりもっと美しく楽しいクルマが道を走る日が目の前に迫っていると思うとワタシはワクワクしますねぇ。EVの世界にようこそ。