2011年8月19日金曜日

「グランツーリスモ5」にゴーストはあるか。


昨年、グランツーリスモ5(以下GT5)が発売されました。
そら恐ろしいほどのリアリズムと、あまりに深く広大なゲーム性は3年間待ったかいがあるというもの。
猿のように毎晩やっている自分と同じ人間が世界中に何十万といるわけです。いやすごいね。


グランツーリスモシリーズが他のドライブゲームを圧倒的に凌駕する点は、どこだと思いますか?
グラフィック?操縦性のリアリズム?世界観? どれも間違いではないのですが、
それはゲームの表層に現れた、氷山の一角のようなものでしかありません。

海に隠された氷山の本体、グランツーリスモの根っこにあり、凡百のドライブゲームにないもの、
それは物理エンジンです。

グランツーリスモでアクセルを踏む→エンジン回転数が上がる→タイヤがスリップする→スピードが上がる…
この一連の動きはすべて実車のシミュレーションから成り立っています。つまり実車のエンジンの排気量、圧縮比、ボアストロークから「実物だったら発生しうる出力」をリアルタイム演算し、それを実車のギア比に応じて減速を計算し、路面のミュー(摩擦抵抗)とタイヤ幅と直径とゴムのヒステリシスと単位当たり面積(車重など)を演算してスリップの具合を画面に表示しているのです。ちなみにトラクションコントロールは実車と同じようにトラクションコントロールがない状態のシミュレーション(エンジン出力)をして、そこに「トラクションコントロールのプログラム」をかぶせて表現しています。

では他のドライブゲームはどうかといえば、アクセル開度、車速などに応じて考えられるいくつものパターンを用意しておいて、それを次々と切り替えているのです。それでもリアルに見えるのは、もちろんゲームマシンのパワーが上がってパターンの数と切り替えが膨大な数になっているから。つまりはいくらリアルに見えても、それは力技であってやたらと細かい紙芝居みたいなものなのです。

さて、グランツーリスモ。
このゲームが恐ろしいのは、その物理エンジン故に、プレイすると運転しやすいしにくいはもちろん、クルマの軽さ重さ、慣性力、車体剛性の高い低いが感じられる領域にまで到達したという点にあります。そう、コントローラーを通じて実体感を持つに至ったのです。

さらに恐ろしいのはハンドルコントローラーでプレイした時です。ハンドルコントローラーにはモーターが入っていて、縁石を乗り越えた時の感触、タイヤが滑っている時の感触、アスファルトに砂が浮いている時の感触、それらすべてが分かります。すべてが違う表現で再現されています。



つまり、グランツーリスモでドライブするクルマは、PS3のCELLチップの中に「物理計算で形作られた本物のクルマ」がモニタ上で走っているのです。